バックハンドが当たらない。振り遅れる。面が上を向いて、ボールが浮く。
レッスンで「バックハンドを直したい」と言われたとき、最初に見るのはスイングではありません。打つ前の2歩です。
テニスポット調べ(2026年10月)では、継続して通われている3名・56レッスン分の記録のうち、24回でバックハンドが課題に挙がっていました。フォアハンドでもサーブでもなく、ここが一番詰まる。
その中でも記録に繰り返し出てくるのが、この一文でした。
「下から上にスイングしてしまう癖をなくす」
五十嵐(編集)
自分もスクールで同じこと言われたやつだ、と思いました
なぜラケットが下から出るのか
打点が落ちているからです。
ボールが腰より下まで落ちてから打ちにいくと、ラケットは構造上、下から出すしかなくなります。スイングの軌道を直そうとしても、打点が低いままなら同じことが起きます。順番が逆なのです。
つまり「下から上に振る癖」は、振り方の問題ではなく、ボールに入るタイミングの問題として扱ったほうが早い。レッスンで見ている限り、スイングの形から入って直った方は少数でした。
実際に起きていた3つの原因
カルテに残っていた記述を並べると、原因は3つに分かれます。ただし、直す順番があります。
① 足が止まって、打点が落ちている
いちばん多い。記録にはこう残っています。
「苦手意識から、足が止まり体を浮かせてしまう癖を無くす」
苦手だと感じているショットほど、人は足を止めます。止まると、ボールのほうが勝手に落ちてきます。そこから打つので、下から救う形になってしまうわけですね。体が浮くのはその結果です。
打ち方を変える前に、ここを先に潰します。
やることは単純で、バウンドする瞬間に足を止める。それだけ。レッスンでは「テイクバックが頂点、ボールがバウンド、打つ」を1・2・3のリズムで数えてもらっています。このリズムの取り方だけを扱った記事は、まだ書けていません。なお、苦手だと思い込むところから足が止まる、という話はテニスにセンスがないと感じる人へにも書きました。
② 両手バックなのに、左手が使えていない
右利きの両手バックハンドで、右手主導になっているケース。これも多い。
カルテにはこう書かれていました。
「左手をメインで打つようにさせると、深いミスと浅いボールのネットミスが減った」
深いミスと浅いミスが同時に減っています。ここが面白いところで、右手で押すとインパクトの面が毎回変わるので、ミスの方向が一定しません。左手主導にすると面が安定して、深い/浅いの両方が落ち着くそうです。
五十嵐(編集)
聞いたら「右手で押すと面が毎回変わるから」とのことでした
左手主導の感覚がつかめない方には、逆手でのフォアハンドを打ってもらうことがあります。この練習の記事はまだ準備中です。
③ テイクバックの位置が低い
①と②を直しても下から出る場合、初めてここを見ます。
テイクバックが肩より下から始まっていると、どれだけ足が動いていても軌道は下から上になります。ただ、最初からここを指摘すると、多くの方は腕だけを高く上げて、かえって手打ちになります。だから3番目。
レッスンで実際にやっている練習
球出しを3か所に分けます。サービスライン付近、サービスラインとベースラインの間、ベースライン付近。手前から順に、同じ打点の高さで打てるかを確認していきます。
距離が変わると、落下までの時間も変わります。足の使い方が変わらないと、どこかで必ず打点が落ちます。どの距離で崩れるかによって、原因が①なのか③なのかを切り分けられます。
その上で、本数を課します。
「フォアバック1面動く球出し(10球連続入るまで)」
連続で入るまで終わりません。感覚ではなく数字で区切るのは、テニスポットのレッスン全体に共通する進め方です。
直らなかったケースもあります
正直に書いておきます。
このやり方で短期間に変わる方もいれば、2〜3か月かけて少しずつ戻していく方もいました。特に、他の競技を長くやっていた方は、前の競技で正しかった体の使い方がそのまま出る。どうしても時間はかかります。
そして、この癖が何人に出るのかは数えていないので分かりません。記録があるのは継続3名・56レッスン分だけなので、母数としては十分ではありません。言えるのは「その56レッスンのうち24回で課題に挙がった」までです。
ここを埋めるには記録を増やすしかなく、いま進めているところです。
よくある質問
Q. 片手バックハンドでも同じ原因ですか<br>打点が落ちると下から出る、という構造は同じです。ただ片手の場合、②の左手主導は当てはまりません。代わりに、体の開きを止めることが先になります。
Q. 自主練で直せますか<br>①の足の止め方までは、壁打ちでも確認できます。バウンドの瞬間に足を止めるだけなので、相手は要りません。②と③は、打っている自分の形が見えないと判断が難しい。動画を撮るか、誰かに見てもらう必要があります。
Q. スクールのレッスンでは直せませんか<br>直せないわけではありません。ただ、苦手なショットだけを続けて打つ時間を取るのが構造上むずかしい。体験レッスンに来られた方からは「いつもは苦手のショットに対して、徹底して球出しをする時間があまりない」という言葉をよく聞きます。この話はテニスで初中級から中級に上がれない本当の理由で詳しく書きました。
バックハンドが課題として挙がったのは、テニスポット調べ(2026年10月)で継続3名・56レッスン中24回。同じところで詰まっている方は少なくありません。
ただ、ここまで書いておいて何ですが、ひとつ確認したいことがあります。
そのバックハンド、あなたの目的にとって、本当に今やるべきことでしょうか。
試合で勝ちたいのか、ラリーを続けたいのか、仲間に追いつきたいのか。目的によっては、バックハンドを後回しにしたほうが早いことがあります。実際、当社の代表は学生時代に苦手だったフォアハンドの克服に固執して、強みだったバックハンドまで失いました。
テニスが上達しない原因は練習の順番でしたに、その話を書いています。
